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「令和」の新時代を我々が迎えたとき、そのわずか一年後の令和二年に、中国で発生した新型コロナウイルスによる感染症がここまでの惨禍をもたらし、世界経済をどん底に陥れることを誰が予想しただろうか?

2000年代が始まったときに、20年後、パソコンすら時代遅れとなり、ほぼすべての人がスマートフォン・タブレットという高機能端末を携帯し、データ駆動型社会が到来するということを想像していた人がどれほどいただろう。

予想しなかった変化に直面した時、それを前向きな変革の好機とできるかどうか。変革期にこそ国家社会の底力が大きく問われる。

戦後、日本国内の人口増加、世界の経済成長の中で、日本は右肩上がりの時代における「勝ち組」として経済発展を謳歌した。世界も日本モデルを称賛した。

過去の成功は時として、変化への対応、新たな挑戦への意欲、危機感を邪魔する。これは人類社会の歴史の真理でもある。そしてそれを乗り越え、自らの社会を適切に変革するという難事業に成功した国家、組織のみが栄枯盛衰の中で繁栄を維持することができる。我々が今直面しているのはまさにそんな挑戦だ。

定期的に発生する地震や津波に加え、気候変動の影響もあり甚大な自然災害の頻度は上がり、また感染症のパンデミックも定期的に発生すると考えたほうがいい時代となった。今回のコロナ禍はそうしたリスクを我々に再認識させるきっかけとなった。

今回の中国で発生した新型コロナウイルスによる感染症の拡がりは、世界規模で、また日本、そして地域においても、感染症対策はもとより、社会構造、経済のあり方など、我々が抱く脆弱性を炙り出すこととなった。我々政治家こそが、この危機を大きな挑戦としてとらえ、従来の常識を見直し、真に強靭(resilient)な社会を実現する好機とせねばならない。

こうしたイベントリスクに加え、我々は以前から変わらぬトレンドにも注意を払わねばならない。それは我が国における少子化高齢化であり、技術革新のペースが速くなったことによる消費者ニーズなど需要の急速な変化であり、安全保障面でも経済面でも急速に台頭する中国という挑戦である。またデジタル・トランスフォーメーション(DX)、データ駆動型社会の到来という中で、社会のあり方が急速に変化する時代にいるという認識を我々は持つべきである。3四半世紀にわたって世界の秩序形成において大きな役割を果たしてきたアメリカは、世界秩序に積極関与する「大きな島国」と内向き志向の強い「小さな大陸」との間で振れている。

これまでも我々の社会は戦争や自然災害、感染症など幾度となく大きな危機に直面してきた。それを乗り越えてきた国民の強さは世界に誇るべきものである。しかし、同時に長期的な観点から、経済社会政治システムの変革を成し遂げることができたかといえば、時間の経過とともに変革の機会を逃してきたことも否定できない。

今回の危機においてこそ、我々が直面する課題とその解決策を、短期(第二波・不況対応【適応】)、中期(オリパラ後を見据え【対策】)、長期(5年~10年、内外の潮流を見据え【システム変革】)に分け、時間軸を明確にしたうえでブレークダウンしていくことが重要である。

高齢化、気候変動などのトレンドが続くことに加え、今後も必ず起こるパンデミック、大地震、変化の速い経済環境等、非常に先行きの見通しを立てづらい、すなわち継続だけでは対応できない新たな時代にこれから直面する中で、リスクへの備え、不安定な時代の中での攻め、攻守両面での戦略構築が必要だ。

日本が生き馬の目を抜く国際競争の中で再びのし上がるためには、政治も、社会も変わらねばならない。政治家の使命は、社会の脆弱性・課題を正確に把握し、最も効果的な方針を指し示すことである。