外交政策

日本にとっての国際政治とは?

究極的な目的

日本の長期的国益の実現、確保
世界的な機会の平等の確立
グローバルガバナンスの確立
地球環境の維持

もちろんこれらの中では、「長期的な国益の実現」が最終的なゴールのうち最も優先順位が高いものです。しかし日本は世界に単独で存在しているわけでも圧倒的な力を保持しているわけでもありません。したがって長期的な国益を最大化するためには他のプレーヤーである諸外国との間に利害調整が必要です。このようなことを総合的に考えると、国際政治への日本の関わり方、外交の在り方は以下のポイントに分類できるのではないでしょうか。

1.実現すべき長期的国益とは

  • 「日本としての価値観」の世界への発信
    環境、自由、人権、経済など、国際的なルールは守るものではなく作るものです
  • 日本の安全保障
    日本人と日本の国土を最終的に護ることができるのは、日本国だけです
  • 日本の経済的権益の最大化
    経済活動や資源確保など経済的権益を側面支援するのも依然として重要です

2.それを国際社会の中で実現するために

  • 交渉の主導権を握るために情報管理に注意しつつ日本が国益実現のためには最大限の努力をするというスタンスを他国に認知させるような適切な情報発信と能力整備
  • 感情を排し、理性、論理により国益を最大化するような外交運営
  • 歴史の審判に耐えうるよう正義・公正といった絶対的な価値に配慮した外交
  • 短期的国益にとらわれすぎない外交

大原則として、外交・国際政治というのは警察などの公権力がない、いわば戦国時代のような生き馬の目を抜く激しい競争社会だという認識が絶対に必要です。モラルといったものを期待して、もしくは誠意が通じるというように相手の善意に期待するような性善説が通るような場ではありません。まさに韓非子、マキャベリズムの世界だと思って行動することが重要です。最悪のケースを想定しながら如何に最善の方向に持っていくか、そういう営みであります。

また同時に「早く察知して正確に分析して、遅く行動する」ということも外交上非常に重要なことです。ほぼ全てのプレーヤーが自己の生死をかけて、自己の利益の最大化をかけて真剣勝負をおこなっている場である以上、適当な行動というのは命取りにすらなりかねません。

最後に、外交といってもそれに割ける国家の人的・経済的資源が限られていることに変わりはありません。したがって日本の長期的国益にとって何が最も重要で、それをいつするべきなのかという優先順位(プライオリティー)付け、タイミングを如何に最適なものにするかという戦略眼も非常に重要なことは言うまでもありません。

このような大前提、大原則に立った上で、以下いくつかの具体的な政策についてご説明したいと思います。


外交政策

日本外交の長期的ゴール

1.国際ルールは守るものでなく創るもの
- 日本発!価値観の発信 -

「グローバルスタンダード」、「国際ルール」、この言葉にこれまでの日本はどれだけ泣かされてきたことか。影響力の強い国家が既成事実のようにして都合よく作り上げた国際ルールやグローバルスタンダードにただただ合わせ、守るだけだったこれまでの日本。失われたものは計り知れません。国内の調整を口実に、それらを受け入れるだけで、ルール作りに積極的に参加してこなかった政治家・日本政府の責任も非常に重いといわざるを得ません。国際社会において、いったん決まったルールを守るのは先進国、リーダーとして当然の責任ですが、より良い世界を作るため、国民が納得して行動するためには、そして何より日本の国益を守るためには、正義や公正を重んじつつ日本の状況をしっかりと踏まえたグローバルスタンダードを積極的に日本として創っていくことが何よりも重要です。厳しい国際社会では「ルールは守るものではなく作るもの」です。

地球環境問題をリード!

地球環境問題は日本が島国という限られた条件下で、歴史的にも優れた循環社会を作ってきたという経緯に加えて、1970年代の石油ショック以降の省エネ努力により世界に冠たる省エネ社会を作ってきたという事実があります。世界中が日本の技術により日本並みのエネルギー効率となれば地球温暖化問題は解決してしまうとも考えられるほどなのです。

金融敗戦はもう許されない

記憶に新しい、金融セクターのBIS規制に関しても積極的なルール作りへの参加は非常に重要です。もちろん日本のルールの押し付けを恣意的に行なうことはするべきではありませんが、各国の歴史的な経緯や社会的状況にも考慮し、現実的でないような規制を他国に強要するようなルールが国際的に適用されることを阻止するためにも日本としての主張をしっかりと国際舞台でしていくべきです。

CSRのエッジを行け!

今ISOという国際機関でCSR(企業の社会的責任)についての世界基準の作ろうという動きがあります。環境や高齢者雇用その他日本が優位にあるものについては、またノウハウを有しているものについては日本が議論をリードしてルール作りを引っ張ることを躊躇すべきではありません。今まさに決戦のときなのです。

今こそ日本型開発援助モデル

日本外交のツールの一つであった開発援助についても、日本は欧米諸国と異なり、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」といわれるような長期的な視点に立った援助方式を実施しています。戦後発展した途上国の大半が日本が中心となって援助を行なってきた地域であるというもの何か非常に示唆に富む結果ではないかと思います。(⇒日本を越えて

EPAをテコに!

世界貿易のルールについても、よく耳にするFTA(自由貿易協定)よりもよりきめ細かいEPA(経済連携協定:知的財産、サービスなども含め包括的に規定)というものを積極的に進めているというような事例もあります。これなども方式自体が日本独自のものである上に世界的に日本のノウハウを提供していく良い起爆剤になるのではないでしょうか。

2.日本の安全を守るために

「長期的な視野に立った国益の追求と日本人を護ることという外交の明らかな目的を考えたとき、現在の日本を取り巻く情勢は世界の中でももっとも厳しく、その地政学的リスクは現実的なものです。朝鮮半島情勢、台湾海峡情勢をはじめ、中国の台頭や今後起こりうる朝鮮半島有事のリスクを考えれば、日本の安全保障の確保に一刻の猶予もありません。

日米同盟基軸は最善の選択

自主防衛が理想であるが…

日本の安全保障の観点から、日本はどのような外交戦略をとるべきでしょうか。外交の柔軟性の確保のためには自主防衛がもっとも望ましいことは確かです。しかしながら軍事大国を近隣に持つ日本の地政学的環境から考えれば膨大なコストや現下の国際情勢に鑑みて今さらそれは不可能です。また実体のない集団的安全保障に身をゆだねるのは日本国民を危険にさらすリスクを考えれば、あまりにも無責任です。

価値観の共有なくして同盟なし

自主防衛という選択が難しいということであれば次善の選択は安定的な同盟ということになりますが、ある程度軍事力を持った同盟国の候補となりうるのは、ロシアが極東への関心をある程度低下させている現在のこの地域では事実上二カ国しかありません。その二カ国、具体的には中国、アメリカを冷静に比較すれば、価値観や安定性、国家としての信頼性の観点から、覇権国家でありかつ独裁・共産主義国家である中国よりはアメリカとの同盟のほうが望ましいのは少なくとも現時点では明らかです。
現在の中国の覇権志向の対外政策はいずれ日本・アメリカの権益と衝突する可能性が高い以上、日本はどちらにもいい顔をいつまでもしていられるわけではありません。そうである以上、日本はどちらとの同盟が望ましいのかを主体的、戦略的に判断しなくてはいけないのです。そしてその答えは明確であります。
そして強固な日米同盟は地域の安定をもたらし、かつその両国が自由主義、民主主義国家であることは覇権志向を持たないアジア諸国にとっては実は望ましい選択でもあります。

努力なくして同盟なし

日米同盟を考えるとき、同盟は相手あってのものである以上アメリカの視点で同盟を考えることも必要です。実際のところ日米同盟はあくまでアメリカにとっても戦略的な選択に過ぎません。日本がアメリカにとっても彼らの戦略の上で必須の同盟国とならなければ、同盟が解消される可能性があるという事実には常に注意するべきでしょう。
また、日本としても独立国としては外交戦略上も同盟国にすべての軍事能力を頼るわけにはいきません。テロのような地理的な位置が事前には判明できない新たな脅威への対処のために機動性を重視する形態に変換しようとする最近のアメリカ軍のトランスフォーメーションの流れの中で、日本にとって当面必要不可欠な軍備とは何かについての議論も早急に行わなくてはなりません。しっかりとこの地域においてアメリカの手の届かない部分を補充することは、日本自身の戦略的価値を高めることにもつながります。

対中政策は感情を排し戦略的に

感情的外交は国土を滅ばす

対中国政策を考える上で最も重要なのは感情的にならず長期的国益を見据えて冷静な判断を行なうことです。私は過去への反省にとらわれすぎた議論もそれに反発して過去を美化するような議論もどちらも日本の将来の国益を損なう議論だと考えています。外交においてはナイーブでない冷静な戦略性が常に求められるのではないでしょうか。
日本にとって望ましいシナリオは中国が民主主義と自由、人権が尊重される平和国家として安定的に発展することです。李登輝、陳水扁政権下の台湾を見れば、また政治的には若干問題がありますがシンガポールの経済的状況を見れば中国人が経済的にも非常に優秀であることは明らかであり、将来的に中国が自由、人権を尊重する平和民主国家となった暁には経済的にも重要なパートナーとして協調していくことは日本の国益にも合致するものです。

チャイナ・リスク

しかしながら現在の中国は国内の政治状況が一党独裁国家であり日本とは相容れない価値観を持つ国家であり、かつ国連安全保障理事会の常任理事国入りに対する反対運動を世界的に展開したことからも明らかなように反日政策を明らかにしている国家です。そのことからも中国政府が日本と協調する意思を持っていないことは明白でありパートナーとなることは当面は困難な状況です。
また日中間の経済的な相互依存の高まりも顕著ですが、その点についても、中国の少子高齢化が急速に進展しており世界で最初の「豊かになる前に高齢化する国」になることや、国内格差から来る社会不安の高まり、いびつな政府と中国企業との癒着による金融構造の歪み等を考えれば将来に向けての経済的リスクは他のアジア諸国よりも高いといわざるを得ません。進出する日本企業には法的基盤の整備が遅れている中国の状況と併せてリスクをしっかり踏まえ中国への進出戦略の見直しなどのリスクマネージメントが早急に必要です。

北京の真の思惑

最近の中国の動きについては、尖閣列島、ガス田、日中中間線等の東シナ海をめぐる中国の最近の動きは単純にエネルギー戦略の文脈で捉えることは非常に危険であると私は考えています。かつて1970年代以降中国がベトナム等に対して南シナ海を自らの海とするために取ってきた行動パターンが「領有権棚上げの提案→海底資源開発→一方的領有宣言と実効支配」というものであるという歴史的事実を考えれば、最近の中国の動きと非常に似ているのは決して偶然ではないはずです。中国政府のこれまでの政策は、自らが将来軍事力の強化により相対的に軍事的優位に立つことを大前提として、近隣諸国との諸問題をそれまでは棚上げして自らが優位に立った時点で自らに有利に問題を解決するという時間を味方につけた、ある意味非常に優れた外交戦略に立脚していると考えられます(_小平「数十年たてば強国になるのでそれまで棚上げしておくのが中国にとって最良の選択」)。日本としては中国の攻勢に対してはその真意をしっかりと把握し、将来に禍根を残さないよう、戦略的な解決を図るべきです。
安全保障理事会の常任理事国入りの反対についても、中国としては日本を封じ込めアジアにおいて日本に対して優位に立つという目的に加え、自らの経済・人口規模が日本以上に拡大している状況から、問題を先送りにすればするほど、中国のみがアジアの代表であって日本が常任理事国となる必要性が低下するという状況を作り出せるとの判断に基づいていると考えられます。中国の対日攻勢に対しては毅然とした態度で臨むべきものであり、問題を棚上げにする等の一見中立的な提案に乗ることなく日本の将来の国益を損なうことがないよう、厳しく対処していかなくてはなりません。

世界の中の日中関係

北京にとって長期的な競争相手として意識しているのは日本よりもむしろアメリカです。現状において中国はアメリカに対して外交上は圧倒的に不利な状況にあります。その最大の要因はアメリカがアラスカやハワイの領有により、把握されにくい移動式、固定燃料の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の射程圏内に中国全土をおさめている一方で、中国側はアメリカを射程におさめる把握されにくいICBMの配備がまだできていないことに加え、最終的に相手に対する牽制となる核弾道ミサイルの発射が可能な潜水艦とその行動範囲(制海権)においても太平洋である程度自由に行動できる制海権を持つアメリカに著しく劣っているからです。
その観点からすると北京から太平洋を見たとき、日本列島、沖縄はまさに彼らの行動の自由を制約するキャップとなってしまっているのが現状です。日中の境界が事実上日本が主張する日中中間線に現在あるために中国の潜水艦が太平洋に出ようとすると日米に容易に把握されてしまうことは2004年11月の中国原子力潜水艦の領海侵犯事件からも明らかです。中国の原子力潜水艦が太平洋にある程度安定的に進出するためには日中の境界をできるだけ沖縄列島に近い位置に持っていくことが重要であり、そのためには中国が主張する大陸棚とすることが中国的には死活的に重要です。 ガス田の開発を中間線にかかったガス田について採算度外視で行なっていることには、日中中間線を否定できるような既成事実の積み上げをするためである、つまりエネルギーが目的ではなく、エネルギー確保という目的を名目とした制海権確保、原子力潜水艦の航路確保という海洋戦略に基づいていると考えるべきだと私は考えます。2004年の領海侵犯事件からも中国海軍が沖縄列島の島々の間の詳細な海図を作成しているのは明らかであり、このことも中国の意図の裏づけの一つといわざるを得ません。
中国の軍事費の急増や実際の規模の透明性や意図が合理的に考えればまったく不明である以上、日本に対して侵略的な能力を少なくとも保有し、意図も状況証拠からすれば有していると判断できる中国は日本にとって潜在的脅威以上の存在といわざるを得ません。逆に日本が中国に対する侵略的能力も意思も持っていないことが明らかである現在の状況・潮流においては、日中間の問題の根源的構造的原因は現実的には中国政府の軍事・外交をめぐる現在の姿勢にあるといわざるを得ません。現在の日中間の問題、対立を日本が主体的に解決しようとするならば、日本がすべて中国の要求を呑むことしか中国政府を満足させることはできないという現実をしっかりと認識しなくてはなりません。
このようなことを踏まえれば、中国に対しては彼らのある意味侵略的な長期的戦略目標を達成させないことが重要であり、また中国自体が経済的にも政治的にも安定的な自由な民主主義国家となることができるよう、国際社会とともに取り組んでいくことが重要だと思われます。

今そこにある危機(朝鮮半島・台湾海峡)への対処

日本の周辺地域の差し迫った危機は2つです。
朝鮮半島情勢は、6カ国協議の行われているところですが、核廃棄のプロセスは非常に重要です。北朝鮮の核廃棄が不成功に終わった場合、北朝鮮崩壊後の統一後の朝鮮が核兵器を引き継ぐ可能性が高いのです。その場合、東アジアで核武装していないのは日本と台湾という民主国家のみという状況となりますが、この状況は日本にとってあまりに危険なものといわざるを得ません。日本は核搭載ミサイルの射程圏内にある唯一の北朝鮮の非友好国です。日本は朝鮮半島の核廃棄のプロセスを真の危機感を持って主導すべきです。また、北朝鮮崩壊後の復興支援のスキームも検討を進めておくべきです。
台湾情勢は、2008年の北京オリンピックまでの間に台湾が独立を宣言する可能性はないとは言えず、リスクは高くはないものの確実に存在しています。中国が台湾を占領し吸収した場合、日本は地域で唯一民主主義と自由主義を標榜している台湾が独裁体制下の共産主義国家の一部となることは戦略的に大きくマイナスであることに加え、台湾海峡の制海権を中国が有することとなるため、貿易の首根っこを中国につかまれることとなります。その結果、日本は中国との外交交渉における交渉余地を極端に減らすこととなり、結果として経済も含めた日本の国益大きなマイナスを受けることになります。このような事態を防ぐためには中台双方に現状の変更を断固として認めないとのメッセージを発信すると共に、台湾に対しては自由主義陣営の一員として、アメリカともどもその生存を保証する方策を早急に検討しなくてはなりません。

テロとの対決

ともすると忘れられがちな点ですが、近年の状況から考えると、日本もテロの対象となる可能性が高いと考えざるを得ません。テロとゲリラは明確に異なり、テロには大義はありえません。テロの封じ込めに関する国際協調には積極的に参加するとともに、テロリストに対しては断固たる姿勢を明らかにする必要があります。もちろんその裏づけとして、海外情報収集体制の構築等の措置が必要であり、早急の検討が必要です。
また、テロ組織を壊滅させるためには、テロリストを市民社会から完全に隔離するとともに、資金・人員の面のテロ組織への流れを完全に断絶することが必要です。この 原則は北朝鮮のようなテロ国家に対しても同様に適用されるべきです。

3.民間の経済活動を応援

アジア経済のリーダーとして
~アジア諸国との包括的・戦略的なEPA戦略~

アジア諸国、特に東南アジア諸国の日本に対する期待感には依然として大きいものがあります。工業の段階的にも競合相手となる中国がこの地域に積極的に進出していることに危機感を持っており、そのバランスをとるためにも日本に対して非常に大きな関心を持っているというのがこれまでの状況でした。
しかし、インド洋の津波において地域外からの救援の一番が日本、次がインドであったということからも明らかなようにインドのこの地域への関心および影響力の増大は非常に急速に伸びています。もし、インドが中国のバランサーとして認知されれば、日本に対する期待というものは徐々に低下するかもしれません。
また、何よりも日本の非常に優秀で高い質を持っている日本人の力を持ってすれば、完全な自由競争が行なわれたならば、どのような国に対しても負けることはないのではないでしょうか。
コスト、エネルギー効率が非常に高く、創意工夫の度合いにおいてもずば抜けている日本の産業が完全な自由競争で負けるということはないはずです。また農業についても、農産品ほど自国産ということに消費者がこだわる製品はないわけですから、本来であればこれほど恵まれた産業はないわけです。その強みを生かしきれていないのは、小規模経営が中心である等の日本自身の構造的な問題であります。
このようなことを考えれば、国際的な自由競争に日本は勝てるはずですし、逆にそれに勝てないようであればこの国に明るい未来はありません。そして、そうすることこそがフェアな日本という意味でアジア諸国の信頼を勝ち得ることにも寄与するわけで長期的には必ず日本のプラスになることでしょう。
私は以上の観点から、日本は一刻も早くアジアのリーダーとして、積極的に通商面でも自由化の先導役となって、この地域の自由競争の活性化をリードしていくべきだと考えます。もっと日本人の底力を信じて。。。

責任ある大国として地域への貢献

1997年のアジア金融危機において日本がとった対応、支援、またインド洋津波のような自然災害時の迅速な対応等は諸外国においては非常に高く評価されています。支援の表明だけプレス向けに大々的に行い、実際には拠出を行なわないことが多い中国の不誠実な対応と異なり、まさに「心からの支援」を行なっている日本のこれまでの方針は堅持していくべきです。具体的には、(1)1997年の通貨危機のような自体が再び発生しないようにするためのインフラ整備としてのチェンマイイニシアチブのような国際金融の安定化の枠組みの導入、(2)アジアのリーダー層からアジア諸国の製造業等の現場技術者にいたるまで幅広い人材の育成に対する支援策としての日本での研修・留学・日本からの人材派遣等の拡充、(3)産業への資金循環を活性化しより自主的、自助の精神でのそれらの国の発展を支援するために共通債券市場の整備、など、アジア地域のインフラ基盤強化を積極的に主導していくことが重要です。

エネルギー安全保障
~この国のアキレス腱としないために~

日本経済の発展のためにはエネルギー源が安定的に確保されることが重要です。現在日本は原油の大半を中東に依存していますが、このことは非常にリスキーです。エネルギー源の多様化、つまり、原子力や天然ガス、さらにはバイオマスや風力等の新エネルギーへの転換を行うことも重要ですが、同時に原油、天然ガスの自国海域内での開発、自主開発、いろいろな地域からの購入等を行なうことでリスクを減らしていくことが、この国の経済の安定的持続的発展のためには必要です。そのためにもロシア、中央アジア、アジア諸国等との関係強化は喫緊の課題です。

環境技術など「日本の強み」で世界を攻めろ

日本は自動車をはじめとしてほとんどの産業で最先端の環境技術の開発に成功しています。そしてその成功は主として各企業、技術者をはじめとする関係者の努力の賜物です。世界のほとんどの地域において「日本製」は尊敬の対象となっており、日本のソフトパワーの大きな担い手となっています。このような日本の強みをわれわれがしっかり認識して積極的に諸外国にアピールしていくことは日本の国益のみならず、地球環境問題の解決など世界全体の利益に資することにもつながる場合が多いということに私たちは気づくべきです。日本ができることを同じ人間ができないはずがない。日本のトップランナーの基準を世界の基準として世界標準化し各国が守るべき義務とすることは、決して日本のエゴではなく地球規模の問題の解決に直結する強力な切り札でありそれを求めることは技術革新のエッジを行く日本の義務ではないでしょうか。

国際政治のプレーヤーとしてグローバルな主役へ

私たちが日本という恵まれたこの国に生まれたのはまったくの偶然に過ぎません。私たちと同じことをして同じ努力をしても報われないで飢餓の中にいたり紛争の中に生きている人たちがいるという事実に決して目をつぶってはいけないと私は思います。機会の平等は日本国内だけで保障されていれば良いというものではありません。世界中の人にチャンスを。そのために日本として何ができるのか?

開発・環境問題を中心に日本的価値観の積極的な発信による国際貢献を通して日本という価値観(バリュー)を世界の人々の選択肢の一つとして発信・ノウハウの提供をしていくことも責任あるリーダーの一国として日本がすべきことの一つです。その観点から、これまで受身でありすぎた日本の外交姿勢を転換し、国際的ルール作りに積極参加していくこと、そのような発想の転換が必要です。このことは、国際社会の常識ではルールは守るものではなく作るものであるという以上に、責任ある大国として当然の責務なのです。

さらに、グローバルガバナンスへの貢献を如何に行っていくか、どのように仕組みを作っていくかということを「国益」でなく「人類共通の利益」の観点から考えることも日本の立場を考えれば必要です。「インター「ナショナル」」政治という現実、「グローバル」政治という理想、この矛盾を解きほぐし、明るい未来を構築していくことこそ、最先端国家日本に課せられた究極の課題ではないでしょうか。